女性声優になりたい

なりたいね

AZALEA 淡島ホテルへようこそ

花丸「うわ~! すご~い!」

果南「マル! 階段で走ったら危ないから!」

花丸「でも果南ちゃん。こんなに立派な階段、思わず駆け上がりたくなっちゃうのが当然ずら!」

果南「まあ、気持ちはわからなくないけど」

花丸「それで手すりのところを一気にズラァ~~~っと滑って!」

果南「それだけはやめてね! 女の子なんだから」

花丸「じゃあ代わりに、ダンボールでソリを作って階段のところをズラァ~~~っと!」

果南「河原の土手じゃないんだから」

花丸「でも本当にすごいね。淡島ホテルのロビーって」

果南「そうだね、落ち着いたクラシックな感じで。私もちゃんと入ることはほとんどんないから」

花丸「それで、マルたちはここでどんな仕事をするの?」

果南「うーん、詳しいことは私も知らないんだよね。鞠莉の紹介ってことだけ聞いてるけど」

花丸「鞠莉さんの?」

果南「ほら、鞠莉ってこのホテルに住んでるから」

花丸「ふーん」

果南「ところで、ダイヤ知らない?」

花丸「え? あ、そういえば姿が見えないずら」

果南「ダイヤなら詳しいこと知ってるはずだけど」

花丸「ああ! ホテルで人が一人消えた……これは、事件発生ずら!」

果南「いやいやいや……」

花丸「ドラマなんかでよくあるずら! 立派なホテルの密室で、宿泊客が忽然と消えてしまうって」

果南「ドラマではよくあるけど、これはドラマじゃないから」

花丸「じゃあ、コント?」

果南「コントでもないと思うけど」

花丸「とにかく事件ずら! 早速捜査本部を設立して……」

ダイヤ「花丸さん」

花丸「うわぁ!」

果南「ダイヤ」

花丸「うっ、本部設立前に事件解決……」

果南「どこにいたの?」

ダイヤ「少し向こうで電話していましたの」

花丸「電話?」

ダイヤ「ルビィが松月さんでちゃんとやっているかどうか確認の」

花丸・果南「ああー」

花丸「お姉ちゃんって感じずら!」

果南「それでどう? 頑張ってた?」

ダイヤ「みかん畑にいたと」

花丸・果南「え?」

ダイヤ「今、急いで店に戻るところだと言っていましたわ」

果南「みかん畑に、なんで?」

ダイヤ「あぁ、やっぱりあの子にはまだバイトなんて早かったのかしら……」

果南「でも一人じゃないし、千歌と曜も一緒だし」

ダイヤ「あてになると思います!? 曜さんはともかく、千歌さんが!?」

果南「えーっとぉ……はは……」

ダイヤ「今からでも遅くありませんわ! お店に迷惑をかけてしまう前にルビィを!」

花丸「そんなのダメずら」

ダイヤ「え?」

果南「マル?」

花丸「お姉ちゃんがそんなこと言うなんて、ルビィちゃん、すっごく頑張ろうとしてるずら! ちゃんとバイトできるところを見せて、お姉ちゃんに安心してもらおうって!」

ダイヤ「ルビィが、そんな……?」

花丸「だから、ここは黙って見守るずら。大丈夫、ルビィちゃんならきっとやってみせるから」

果南「マル……。」

ダイヤ「ふぅ……わかりましたわ。そこまでおっしゃるなら」

花丸「本当? よかったぁ!」

ダイヤ「ところで花丸さん。」

花丸「何?」

ダイヤ「ルビィのことはともかく、先ほどのあなたの発言には大きな問題がありますわ」

花丸「え? マルの?」

果南「ていうか、先ほどってどこ?」

ダイヤ「捜査本部がどうのと言っていたことです!」

果南「ああ~」

花丸「だって、いなくなったと思ったから捜査本部を……」

ダイヤ「そこが問題です!」

花丸「あう!」

果南「まあまあ、マルもダイヤのこと心配して……」

ダイヤ「そのようなことは問題ではありませんわ」

花丸・果南「え?」

ダイヤ「あなた達……何もわかっていませんわねぇ」

花丸「え、えーっと。果南ちゃん、わかった?」

果南「うーん、微妙にわからない気が」

ダイヤ「つまり! あり得ないということですわ!」

花丸・果南「あり得ない?」

果南「あ、ダイヤがいなくなるようなことが?」

花丸「でも実際いなくなって」

ダイヤ「私だけに限りません!」

花丸・果南「え?」

ダイヤ「つ・ま・り! 伝統と格式あるこの淡島ホテルで! 宿泊客が忽然と消えてしまうような不祥事はあり得ないということですわ!」

花丸・果南「ああ~」

ダイヤ「これから働かせていただくという立場にありながら、そのような不適切な発言。ホテルに失礼だと思いませんの!?」

花丸「そんな、マルは……」

果南「まあまあ、マルはドラマの話で言ったわけだし」

ダイヤ「そういうところが遊び気分だと言うのです。気が抜けていますわ」

果南「ま、まあまあ」

ダイヤ「働く前にまずはしっかり指導しなくてはいけませんわね。伝統と格式あるホテルで働くのがどういうことかということを!」

果南「まあまあ」

花丸「……抜けてないずら」

ダイヤ「えぇ?」

果南「マル?」

花丸「マル、気が抜けてなんていないずら!」

ダイヤ「花丸さん? 今なんて言いました?」

花丸「マル、間違ってないずら。なのにそんな言い方……」

ダイヤ「まだわからないのですか花丸さん! あなたのそういう態度が!」

果南「ちょうちょう落ち着いてダイヤ。ほら、マルも謝って」

花丸「マル、間違ってないずらぁーーー!」

果南「あ! マル!」

ダイヤ「どこへ行くの!待ちなさ」

花丸「ずらぁーーーーーー!(手すりを滑り降りる)」

果南「ちょ、手すりを滑っちゃダメだって!」

花丸「マル、間違ってなぁーーーーーい!」

ダイヤ「ま、待ちなさい!花丸さん!花丸さぁーーーーーーーーーん!」


場面チェンジ


(ドアを開ける音)

ダイヤ「ふん!……いませんわ」

(ドアを閉める音)

(ドアを開ける音)

ダイヤ「ふん!……ここにもいない!」

バタン(ドアを閉める音)

ガチャン(ドアを開ける音)

ダイヤ「ふん!……またハズレですの……」

(ドアを閉める音)

(ドアを開ける音)

ダイヤ「はぁ……ここにもいませんわ」

果南「どこに行っちゃったのかな、マル」

ダイヤ「全く……これからバイトをするという時に許されませんわ!」

果南「けど、ダイヤも悪いっていうか」

ダイヤ「はい?」

果南「ああ~なんでもないなんでもない」

ダイヤ「まさか! あの子、すでにこのホテルから逃げ出して……」

果南「それはないと思うよ。」

ダイヤ「え?」

果南「ルビィのことをあんな風に庇ってたんだよ。なのに、自分が逃げ出すなんて絶対にない」

ダイヤ「それは……た、確かにその通りですわ」

果南「でしょ」

ダイヤ「それでもこうしていなくなってしまうのは問題ですわ! 本当にどこに行ったのかしら」

果南「けど、改めて回ってみると迷路みたいだね、ホテルの中って」

ダイヤ「それも伝統と格式の成せる技ですわ」

果南「そうなの?」

ダイヤ「ふぅ……花丸さんを見つける何か良い手段は……」

果南「あ! あれどう? 館内放送! 迷子の親の呼び出しみたいに」

ダイヤ「却下!」

果南「え、ダメ?」

ダイヤ「我がAZALEAの恥を晒すようなことはできませんわ!」

果南「もう、見えっ張りなんだから」

ダイヤ「とにかく、今はこうして部屋を一つ一つ!」

ガチャ(ドアを開けようとする音)

ダイヤ「あら?」

果南「どうしたの?」

(ドアを開けようとする音)

ダイヤ「この客室、鍵がかかっているみたいで」

果南「オートロックでしょ? 今までみたいにマスターキーで……」

ダイヤ「開けましたわよ? なのに、まだ閉まったままで」

果南「あ! ひょっとして!」

ダイヤ「鍵の故障?」

果南「じゃなくて! マルがこの部屋に!」

ダイヤ「なんですって!? 花丸さんが!?」

果南「あ! ダイヤ!」

(ドアを開けようとする音)

ダイヤ「花丸さん! いるんですの!? 花丸さん!! 返事をなさい!! 花丸さぁん!!」

果南「ちょうちょう待ってダイヤ!」

ダイヤ「待つ? 何を待つんですの!? こんなところに閉じこもるなんてホテルにも迷惑が!」

果南「まだマルって決まったわけじゃないから!」

ダイヤ「え?」

果南「いや、私がひょっとしてって言っちゃったんだけど、他の人の可能性もあるわけで……」

ダイヤ「あ……」

果南「それにダイヤの言った通り本当に故障って可能性も」

ダイヤ「も、もう! 紛らわしいこと言わないでください。恥をかいてしまいましたわ」

果南「ごめんごめん」

ダイヤ「すると、この部屋の中に花丸さんはいないと」

果南「そうと決まったわけでもなくて。まず、誰か居るのか、それとも故障か確かめないと」

ダイヤ「わかりましたわ。中の人、誰かいるならいると言いなさい! ただの鍵の故障なら、故障と言いなさい!」

果南「いやいやいや」

ダイヤ「さあ、返事は! さあ!」

(ノックされる音)

果南・ダイヤ「あ」

果南「今ノックしたのダイヤ?」

ダイヤ「いいえ、扉の向こうからですわ」

果南「と、いうことは」

ダイヤ「いいえ、ノックだけではわかりませんわ。返事がなければ『いる』なのか、『故障』なのか!」

果南「いやいやいや! いるんだよ! 人がいなきゃそもそもノックを返せないでしょ!」

ダイヤ「では、花丸さんが?」

果南「マルかどうかはわからないけど……」

ダイヤ「花丸さん以外に誰がいますの!? 相撲部屋から逃げた力士が閉じこもってるとでも言いますの!?」

果南「それは絶対にないと思うけど」

ダイヤ「では他に何が……は! ペンギン!?」

果南「それもないけど」

ダイヤ「あー! もう! 直接聞いた方が早いですわ!」

(ノックする音)

ダイヤ「花丸さん! そこにいるのですか花丸さん!」

果南「ダイヤ! あんまり刺激したらかえって閉じこもっちゃうかも」

ダイヤ「けど、何か喋ってもらいませんと。黙ったままでは花丸さんかどうかもわかりませんわ」

果南「それはそうだけど。あ! じゃあこうしたらどう?」

(ノックする音)

果南「もしも~し! 聞こえます?」

ダイヤ「果南さん? 何を?」

果南「これから質問をします。YESの時はノック二回、NOの時はノック一回で答えてください。いいですか?」

コンコン(ノックされる音)

ダイヤ「あ、二回返ってきましたわ」

果南「YESってことだよ! よし、この調子で質問していこう!」

ダイヤ「あなたは、花丸さんですか?」

コンコン(ノックされる音)

ダイヤ「ノック二回、YESということですわよね?」

果南「つまり、この扉の向こうにいるのはマルなんだよ!」

ダイヤ「花丸さん、あなた、どうしてそんなところに閉じこもっていますの? 答えなさい! 花丸さん!」

果南「ダイヤ! YES・NOで答えられる質問じゃないと。」

ダイヤ「あ……そうですわね。えーっと……あなたは、あなたの意志でそこに閉じこもっていますの?」

コンコン(ノックされる音)

ダイヤ「YES、ということは」

果南「マルの意志ってことだね」

ダイヤ「全くどういうつもりで……」

果南「まあまあ落ち着いて。マル、マルは今、怒っていますか?」

コン(ノックされる音)

ダイヤ「一回ですわ」

果南「怒ってないってこと? じゃあ、なんで閉じこもってるの?」

ダイヤ「理由の詮索は後ですわ! とにかく、ホテルに迷惑をかける前にここから出しませんと」

果南「マル、扉の鍵を開けてくれますか?」

コン(ノックされる音)

果南「出てくる気はないみたいだね」

ダイヤ「もう。どこまで困らせますの。何かありませんか花丸さんをここから出す方法は!」

果南「誰かに呼びかけてもらうとか?」

ダイヤ「誰かとは?」

果南「それは……あ! ルビィはどう?仲良しだし」

ダイヤ「できるわけありませんわ! ルビィは今松月でバイトをしていますのよ!」

果南「それはそうだけど」

ダイヤ「先ほどはみかん畑にいたようですが……は!」

果南「何? 名案?」

ダイヤ「そうですわ、みかんですわよ! みかんの皮を剥いて、中身を一房ずつ下に置いてって、それで花丸さんをおびき寄せると」

果南「それ、本気?」

ダイヤ「……すみません。気が動転して意味不明なことを」

果南「あ! そうだ! ダイヤがルビィになるんだよ!」

ダイヤ「え?」

果南「だから、ダイヤがルビィの真似をして、マルを説得するの」

ダイヤ「はああ? 私が? ルビィの? そんなこと……」

果南「できるって! ほら、扉があるから向こうからはこっちが見えないし。それに、二人は姉妹なんだから」

ダイヤ「ですが……」

果南「マルを早くここから出さなきゃなんでしょ? だったら!」

ダイヤ「う……うぅ……んん……こ、こんにちは、ルビィです!……こんな感じですか?」

果南「そっくり!」

ダイヤ「そうですか? では、説得してみますわよ」

果南「じゃあ、今からダイヤはルビィってことで。はい(手を叩く)」

ダイヤ「え、えっとぉ……マ、マルちゃん、そこにいるの? 私です、ルビィです」

果南「そうそうその調子!」

ダイヤ「お願い、マルちゃん。そこから出てきて!」

コン(ノックされる音)

果南「え、NO?」

ダイヤ「ちょっと! ルビィで頼めば出てきてくれるのでしょう!?」

果南「ああ諦めちゃダメだよ! ほら! もっとルビィになって!」

ダイヤ「ええ!? あ……お願い、マルちゃん。出てきてぇ……」

コン(ノックされる音)

ダイヤ「ぴぎぃ! そ、そんなこと言わないでぇ! ルビィ、困っちゃう……」

コン(ノックされる音)

ダイヤ「うぅ……ルビィ、泣いちゃうかも!」

コン(ノックされる音)

ダイヤ「ルビィ……」

コン(ノックされる音)

ダイヤ「あの」

コン(ノックされる音)

ダイヤ「ル」

コン(ノックされる音)

ダイヤ「ってぇ! まだ何も言ってないでしょぉ!?」

果南「ダイヤ! 戻ってる戻ってる!」

ダイヤ「は!」

果南「あ!」

ダイヤ「果南さん?」

果南「ごめん、よく考えたらホテルの客室のドアには覗き窓が……」

ダイヤ「全然ダメじゃありませんか! というか、今までのこと全部見られてたんですの? どうしてくれるんですか!」

果南「だからごめんって」

ダイヤ「ダメですわダメですわ! こんな小細工ではどうにもなりません!」

果南「じゃあどうするの?」

ダイヤ「ここは正面から!」

果南「ちょ、暴力はダメだよ!」

(ノックする音)

ダイヤ「花丸さぁん!」

果南「だから暴力は!」

ダイヤ「大人しくここから出てきなさい! その代わり!(ドアを叩く)」

果南「え、その代わり?」

ダイヤ「私が、私が代わりに閉じこもりますわ!」

果南「って何の意味もないでしょそれじゃあ!」

ダイヤ「ですが、こういう時その、人質交換と言いますかそのような交渉を! 人質はいませんけど、私が代わりになっても良いという……」

果南「とにかく、そんなのでマルが出てきてくれるわけ……」

(ドアの開く音)

果南・ダイヤ「あっ」

ダイヤ「扉が」

果南「マル!」

花丸「ずら」

ダイヤ「出てきてくれましたのね!」

果南「でもなんで」

ダイヤ「私のこの気持ちが、花丸さんに届いたのですわ!」

果南「それはないと思うけど」

花丸「届いたずら!」

果南「届いたの!?」

花丸「これでわかってもらえたと思ったから、マルの言いたいことが」

ダイヤ「え?」

果南「マルの言いたいこと?」

花丸「マル、さっき言われたずら。このホテルで事件は起こらないって」

果南「あー、言ったね。ダイヤがそれっぽいこと」

ダイヤ「わ、私のせいだと仰りたいんですの?」

花丸「だから、マル、証明してみせたずら」

果南・ダイヤ「証明?」

花丸「そう! だからマル、籠城事件を巻き起こしたずら!」

果南・ダイヤ「籠城事件!?」

花丸「そう! こういう事件がいつ起こってもおかしくないって!」

果南「マル、それで閉じこもったり?」

花丸「うん!」

果南「マル~……」

ダイヤ「花丸さん!」

果南「ダ、ダイヤ! マルに悪気はなくて……」

ダイヤ「ありがとうございます!」

果南「ええ!?」

ダイヤ「私教えられましたわ! そうですわね、このような非常事態はいつでも起こりえます! その時に備えた心構えが大切なのですね!」

花丸「そう! それを言いたかったずら!」

ダイヤ「花丸さん!」

果南「えーっと、つまり、解決ってこと?」

ダイヤ「ホテルの格式に甘えることなく! 何が起こっても対応できるようバイトの私達も気を引き締めねばなりません!」

花丸「その通り!」

果南「ところで、そのバイトの仕事の内容って?」

ダイヤ「仮にどんな敵が攻めてきても、このホテルを守ります!」

花丸「おお~、どんな敵も?」

ダイヤ「もちろん!」

果南「あの~」

花丸「宇宙人が攻めてきても!?」

ダイヤ「っそれは、えっと、まず……宇宙語を学ぶところから」

花丸「じゃあまず練習ずら!」

ダイヤ「わかりましたわ」

花丸「ワレワレハウチュウジンズラ」

ダイヤ「は、花丸さんが宇宙人なのね。ワワワワワワレワレハチキュウジンデスワ」

果南「だから私達の仕事って!? もしもーし! おーーい!」

花丸「とってもいい感じずらー!」

ダイヤ「いい感じ?」

花丸「この調子でもっと練習するずら!」

ダイヤ「ええ頑張りますわ!」

花丸・ダイヤ「(宇宙語)」